自治会・町内会で防犯カメラを設置するメリットとは?
近年、安心した街づくりの一環として自治会や町内会で防犯カメラの設置を行うところもあります。ここでは、自治会・町内会で防犯カメラを設置するメリットについて解説します。 自治会・町内会は地域防犯の役割も担 …
犯罪を抑止し、人物を特定する上で欠かせない存在となった防犯カメラ。しかし、目出し帽など顔全体が隠れるものを着用して犯行に及んだ場合、人物が特定できないこともありました。そこで、近年では個人を識別する新たな手段として「歩容認証」が注目を集めています。
人の歩き方は誰もが同じに見えて、実は千差万別です。特に個人差が大きいのは、重心の位置だといわれています。歩いている人間の重心の位置を横から見ると、一定の波形が存在することが明らかになっています。この個人特有の波形の周期性をアルゴリズム解析したのが、歩容認証の仕組みです。
防犯カメラに写った歩行シルエットをコンピュータで分析する歩容認証の場合、服装に左右されることがありません。重心の位置は、日常的によく使われるビジネスバックや手提げ程度で変わるものではないので、被疑者追跡にもってこいといえるでしょう。また、シルエットによる解析のため、防犯カメラの画質が悪くても人物を特定しやすいというメリットもあります。
日本での歩容認証の第一人者ともいえる八木康史氏によると、歩容認証の精度は2歩分の映像があれば、90%以上とのこと。この精度はDNA鑑定には及ばないものの、犯罪捜査において大いに役立つ技術として期待を集めています。犯罪捜査に一役買うであろう顔認証や虹彩認証の場合、センサーとの距離が50cmは必要になってきます。しかし、歩容認証の場合、およそ100m前後離れていても解析できます。
実際、この技術を活かして、前述の八木康史氏が奈良県警の依頼を受けて、放火未遂犯の特定に成功しています。2008年の英国での強盗犯逮捕に続き、2009年に世界で2例目となる歩容認証による逮捕例となりました。日本の逮捕例の場合、持ち込まれた防犯カメラの顔の映像に犯人の顔が映っていない状態であったことから、犯罪捜査における歩容認証の実用性を立証した事例として関係各所の注目を集めています。
歩容認証の活用方法は、何も犯罪捜査に限ったことではありません。福祉企業における活用の可能性も検討され始めています。例えば、街を徘徊している認知症の高齢者や巨大なショッピングモールでの迷子の発見にも一役買うことになります。前述の八木氏によれば、歩容認証は頭部情報や年齢を加えると、精度が99%に達するとされています。
また、歩容認証は特別な機材を必要としないため、街角の防犯カメラやすでにショッピングモールなどに設置されている既存品を活用することができます。そのため、指紋認証などの生体認証に代わる手段として、あらゆる場面や企業での活用が見込まれます。実用化に向けては更なる研究の積み重ねを要するものの、技術が確立される日も遠くはないでしょう。
今後も新たなテクノロジーの誕生に伴って、防犯カメラの性能がどんどん向上していくことが予想されます。犯罪手口の巧妙化が取り沙汰されていますが、防犯カメラに搭載される技術の進歩も負けてはいないでしょう。ますます、犯罪の抑止や解消に向けての防犯カメラの役割が重要になってくるはずです。